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2013年10月21日月曜日

韓国ルーツの速読法裏事情



文章を通常の速度よりも早く読む速読というのは、古来からいろいろなところでおこなわれていたそうなので、速読は韓国が起源とは必ずしも言えないのでしょう。けれども、「右脳を使った」?日本の速読法(速読術)のルーツは韓国にあるようです。

韓国では、1979年にキム・ヨンジン氏が丹田呼吸と並行し、視点をすばやく移動させる速読の仕方をラジオで紹介。翌年には「新生活読書法」という本を出版します。しかし、宣伝するほどの「効果」が万人に対しては得られなかったことから、一般には普及しませんでした。

当時、韓国で速読がブームになったと紹介しているサイトもありますが、これは語弊があります。実際には、メディアを利用して意図的に速読ブームを起こそうとしたものの、ブームは起きなかったというのが正しい表現かもしれません。

キム氏は、韓国の行政機関である未来創造科学部「所管」の(社)科学先賢チャン・ヨンシル先生記念事業会(ホームページ)が「主催」する、「チャン・ヨンシル科学文化賞(金賞)」を受賞しているようですが、この賞の受賞者には、発明家として有名な?ドクター中松こと中松義郎氏もいます(インターネット大韓ニュース24)。

(李氏)朝鮮時代の科学者であるチャン・ヨンシルの名を冠した賞には、韓国産業技術振興協議会(KOITA)と毎日経済新聞社が「主管」し、未来創造科学部が「主催」する「IR52チャン・ヨンシル賞」(ホームページ)という賞もあります。

「ガンジー平和賞」にも、インド政府から贈られるものから、怪しげな団体が運営するものまで、様々な「ガンジー平和賞」があるようですが、チャン・ヨンシルの名を冠した賞にもいろいろあるということなのでしょう。

またキム氏に関しては、「ノーベル賞候補に推薦された」(時事ピープル)といった提灯記事や、「ノーベル賞受賞者100名を育成するプロジェクト」(聯合ニュース)を立ち上げたといった「報道資料」もあります。

キム氏自らがこれらの記事を企画していたとしたなら、キム氏がどういった人物かについては、想像に難くないのではないでしょうか。ただし、キム氏以外の誰かが記事を企画したのなら、キム氏を胡散臭い人物だと印象付けようとするための策略だったのかもしれません。

キム氏と同じころに速読法を研究していた人には、パク・ファヨップ氏という忠清北道の清州市にある西原大学の元教授がいるそうです。

一説には、キム氏はパク氏が教えていた速読法を真似たという主張もあるようです。この主張が正しければ、パク氏が韓国における速読法の始祖との見方もできるのでネット検索してみましたが、わかりませんでした。

韓国人のなかには、速読法も縮地法(瞬間移動の術)のような朝鮮道教の道術のひとつだと考えており、キワモノ扱いしている人もいました。それが事実だとすると(事実でない可能性もあります)、韓国の速読法の本当のルーツは朝鮮道教の道術なのかもしれませんが、はたして。

日本では、1969年に佐藤泰正氏が文章の必要な部分だけを選択して読む読書の仕方を紹介する本を出版しています。ただ、この速読法は、いわゆる「飛ばし読み」「拾い読み」での速読であって、「右脳を使った」?速読法の範疇には入らないのでしょう。

「右脳を使った」?速読法の場合だと、1980年代になって、名古屋の加古徳次氏や朴相輔氏らが日本速読術研究センターを立ち上げ、韓国のキム氏の速読法を紹介したのがはじまりのようです。

その後、1984年に加古氏は、横浜のファザード看板の業者と速読法の本をだすことになるのですが、翌年に加古氏が亡くなると、加古氏の遺族と業者は本の扱いなどで揉めることとなり、結局、業者は捏造した体験談が書かれた本を新たに出版。誇大広告といわれても仕方がない販促活動で教材を売っていたといいます。

ちなみに業者の速読法の広告には、なぜか脈絡もなく、ポルノ女優が登場していたそうです。速読とポルノ女優のあいだに、どんな関係性があったのかは不明ですが、のちに業者の実質的な経営者がこのポルノ女優と結婚したことから考えると、経営者は商品のコンセプトなど考えずに、単に自分のオンナを速読の宣伝に使ったのかもしれません。

この業者は、速読法のほかにも、胎教で天才が生まれると妊婦に幻想を抱かせる本も出版(業者の扱いは「監修」)。本を読んで問い合わせてきた妊婦に高額の胎教セットを売っていたとか。

業者の商売のノウハウは、羽毛布団の出張展示販売から学んだのかもしれないといった話も業者の元従業員から聞きました。値段がわかりづらいモノを、いかにも付加価値があると思い込ませて高い値段で売る。ファザード看板しかり、速読の教材しかり、胎教セットしかり。品物は違っても、売り方は羽毛布団の出張展示販売と同じということなのでしょう。

業者は、ファザード看板の事業の清算したのちに、不動産開発業会社を起します。2007年にはマンションブームに乗り、東証2部に上場するも、翌年には倒産。現在は建築関連の会社を立ち上げ、観光ホテルも運営しているようです。

速読法の訓練を積めば、おそらくほとんどの人はそれなりに文章を早く読めるようにはなるのでしょう。ただし、誰もが本をパラパラとめくっただけで、内容が全て頭に入るようになるわけではないようです。

また速読も早食いといっしょで、速読すること自体が自慢になったり、見世物になるだけであって、読書を味気ないものにするだけだという意見もあります。これについては、読む本の種類によって速読するか熟読するかを読み分ければいい話ではありますが。

かつてのような、誇大広告じみた文句で速読の教材などの販促活動をするところは減っているようですが、それでも速読に過大な幻想を抱き、のちのち損をしたと感じる人がでてくる可能性は無きにしも非ず。まずは、速読の訓練をはじめる前に、韓日の速読業界の裏事情でも知っておいたほうがいいかもしれないと思った次第です。